INTERVIEWS

第62回 武藤 友木子

グーグル合同会社 Head of Japan, New Business Sales 

プロフィール

武藤 友木子(ムトウ ユキコ)
ICUを1998年に卒業後、アクセンチュア株式会社(元 アンダーセンコンサルティング)に入社。2000年に25歳でインターネット企業を設立し、9ヶ月後楽天株式会社へ売却。自身も楽天株式会社へ転籍し、7年後の2007年よりトラベルズー・ジャパン株式会社 代表取締役社長に就任。その後OpenTable株式会社 代表取締役社長を経て、2017年1月より現職。
渡辺
Googleのオフィスに初めてお邪魔しました。明るくて、開けていて、壁一面に銭湯のような富士山の絵や、縁日の写真が。お忙しいと伺いましたがいかがですか?
武藤
そうですね、先週はわりと大変でしたね。でもこの会社で夜8時以降に残っていることはほとんどないです。お休みもきちんと取っています。あと大きく違う点で言うと、今子供が 1 歳と 3 ヶ月になるところなので、極力仕事を切り上げています。
渡辺
おめでとうございます!時短で働くなど制限は設けていらっしゃるのですか?
武藤
特に、設けていないです。産休に入ったのも予定日の 2 日前からで、3ヶ月で戻りました(笑)。
渡辺
えー!さすがといいますか…。
武藤
大丈夫でしたね。かつ生まれるのも 1 週間遅れてくれたので、その 1 週間は平日でないと行けないようなところに毎日出かけていました。
渡辺
ご主人さまのサポートもかなりあったのですか?差し支えなければですが?
武藤
そうですね、かなりありました。主人は理想のパートナーです!お互いの生活リズムを理解した上で、サポートし合える関係です。あと、子供は 3 ヶ月目くらいから夜通し寝てくれるので、大変な感じはないですね。
渡辺
ママ想いなベイビーちゃんですね。武藤さんは、IDはおいくつなんですか?
武藤
98です。
当時、「私はこれがいいと思ったことに対して突っ走ることはもうできる」と思ったんですね。突っ走るよりかは、一歩下がった視点で、どっちが良いのか悪いのかプロコンを考え組み立ててから結論を出すというような、考え方の基本を学べるところに入ったほうが、将来の自分にとってプラスになると思ったんです。
渡辺
現職は Google の新規営業の日本代表でいらっしゃるわけですが、Google にはいつ頃から?
武藤
今年の 1 月からです。会った人達が本当に素晴らしかったのが決め手になりました。
斎藤
これまではどんなキャリアを歩んでこられたのですか?新卒ではアンダーセン(現アクセンチュア)に入られたのですよね?
武藤
実は、商社で内定をもらっていました。最初は商社に行く気でしたが、「コンサルティング会社に入ったほうが私にとって勉強になる」と思って気持ちを変えました。

当時、「私はこれがいいと思ったことに対して突っ走ることはもうできる」と思ったんですね。突っ走るよりかは、一歩下がった視点で、どっちが良いのか悪いのかプロコンを考え組み立ててから結論を出すというような、考え方の基本を学べるところに入ったほうが、将来の自分にとってプラスになると思ったんです。

斎藤
今言われたような考え方というのは、かなり高度な考え方ですね。学生のころに、僕は武藤さんみたいに考えていたかな?と思うと、なんにも考えていなかった。その頃からそういう考え方ができたのは、なぜでしょうか?
武藤
私もあまり考えていなくて。商社はビジネスができそうというイメージだけで、コンサルは何やってるのかもわからないままでしたが、自分が何をやりたいかと考えたら、確かに自分の足りない側面はコンサルで鍛えられるのかなと思いましたね。
斎藤
その後自分でベンチャーを立ち上げたとのことですが、起業したいという思いはいつ生まれたのですか?
武藤
父の家族は、酒造や小売など、一代一代事業を追加していました。そして、父の代でフランチャイズ化をしたんです。一番良いときは 300 店舗くらいまでに拡大しました。これを小さい頃から見ていた影響は大きかったかもしれないです。
渡辺
武藤さんにご兄弟はいらっしゃるのですか?
武藤
兄弟は兄と弟がいますが、父の代で会社を売ってしまいました。
渡辺
武藤さんご自身が継がれることは考えなかったのですか?
武藤
良い意味で期待されていなかったですね。
渡辺
勉強は、小さい頃からきっとお出来になったのでしょうね?
武藤
小学校までは、勉強ができましたね(笑)。宿題をやって、授業も出席して、それだけですごく成績がよかったんです。でも、中学に入ったときに、「普通宿題なんて誰もやんないよ〜」という悪いお友達の影響を受け(笑)、宿題をやらず授業もきかなくなった結果、課目によって成績に極端に差がでていきました。
斎藤
高校の成績は?
武藤
古文漢文とか、覚えなければいけない課目はぼろぼろでした。現国と数学、物理はよかったですね。
斎藤
理系の頭の使い方のほうが得意なんですね。理科系の人は文系の人よりも割りと物事を緻密に考える傾向があります。緻密に物事を考え、「なんでこうなるんだろうね」っていう頭の使い方がコンサルティングに向いているんですよね。
渡辺
中学校の時、お友達の影響から成績がおちてしまった時、「困った!絶対的に暗記しなきゃ!」とは思わなかったんですね(笑)?
武藤
思わなかったんですね〜(笑)。そこは大きな過ちです。やっぱり、やるべき時にやるべき事はしっかりやらなきゃなんだな、というのを社会人になってからすごく思いました。
渡辺
そう思われましたか。学生の頃って、なんで必要なさそうなことを暗記しなきゃいけないんだろうと思ったりしますが、社会人になってから、どんなシーンでそう思われましたか?
武藤
前職はトラベルズーという旅行情報メディアの日本の代表取締役をしていましたが、そこでカントリーリードとして他の国の方と話した際とかに、お恥ずかしい話ですが、教養レベルが低いなというのをすごく感じてしまったんですね。当たり前に知っているべき世界史や近代史など、基本的なことはちゃんと学んでおくべきだったと思いました。
やはり、トラベルズーで初めて外資にきて、今のグローバルコミュ二ケーションのままだと、ジャパンヘッド以上のポジションって多分ないだろうな、と思いました。このまま同じ仕事を繰り返すのはおもしろくないので、ここは突破する何かをしなければ、と思いました。
斎藤
今、大事なポジションつかれているのですが、人って賢いだけではだめなんですよね。よく言われる「人間力」がないと、人がついてこないんですね。単に自分が興味あることを一生懸命やるというだけでなく、自分を豊かな人間にするために何かしないと、「この人は仕事はできるのに、なんか面白味のないつまらない人だな」と思われてしまう。武藤さんは、そういう自分自身の嫌なヤツを脱皮して、更に自分を成長させていこうとした時にどういうことをやってこられたんですか?
武藤
人間力というよりも、もっともっとその前の段階で課題が沢山あって。日本人に対してリーダーシップをとることはできるようになったんですが、トラベルズーで初めて外国にいる外国人に対してリーダーシップをとることになった時に、グローバルな視点でグローバルなリーダーシップの発揮の仕方っていうのが全然だめだったです。そっちをなんとかしようというのを、過去 5, 6 年頑張ってきました。
斎藤
具体的にどういうことをやってこられたんですか?
武藤
1 つは、エグゼクティブ MBA プログラムに参加しました。日本から通学するプログラムで 2 年間のプログラムと同じ授業数を 1 ヶ月に 1 週間、 20ヶ月かけて取るというプログラムです。NY、香港、ロンドンで自分がとりたいコースがあるところに、基本は月に1回 1 週間日本から飛んで朝 9 時から夜 7 時まで授業をガッと受けて帰るというのをやりました。
斎藤
それはすごい!
渡辺
いつ頃ですか?
武藤
2010年から2011年くらいで、トラベルズーにいた時です。初めて外国人をマネージということになって、「これはやばい何かしないと」と思って、参加しました。ファイナンス以外はコンサルティング会社で学んだことでカバーできていたので、お勉強の部分はさほど問題なかったですが、インターナショナルコミュニケーションやグローバルリーダーシップという意味だと、「ああ、そうなんだ」という場面が沢山ありました。費用はかかりましたが、私にとっては明らかにプラスでした。
斎藤
それはすごいことですよ。お金も大変ですが、20ヶ月というのはお金以上に時間が奪われるので、仕事に影響が出ると思ってみんな臆病になってしまうのですね。武藤さんの自分で頑張ってやっていこうというモチベーションはどこからくるんでしょうか?
武藤
トラベルズーで初めていわゆる外資で働き、今のグローバルコミュ二ケーションスキルのままだと、これ以上のポジションって多分ないだろうな、と思いました。このまま同じ仕事を繰り返すのはおもしろくないので、ここは突破する何かをしなければ、と思いました。
斎藤
素晴らしい!
渡辺
武藤さんに実際にお会いすると、柔和で綺麗で清潔感があって、「根性」とかが最初の印象で前に出てこないんですよね。ただ、今のお話をうかがうと、やろうって決めたらやれちゃう根性の持ち主なんですね?
武藤
どちらかというと働き始めてからのほうがそれは強いですね。
渡辺
ただ、実際に仕事をはじめた時、きついわけですよね。確かに学ぶことは多い、でも体としてはきつい。そこで音をあげることはなかったんですね?
武藤
それが本当に楽しかったんですよ。多分上司に恵まれたんですね。個性の強い上司だったのですが、私にとっては毎日本当に面白かったですね。
最近すごく感じているのが、自分の強い分野は、0 から 1 というよりも、素晴らしい 1 があった時に、それを 100 , 1000へ持っていく過程が一番得意だなと感じています。一番大変なフェーズなんですが...1000 といわず、さらに大きくする部分を学びたいというのがあります。
斎藤
先程、英語の話もありましたが、ICUに入ろうってなったのは、何が良かったんですか?
武藤
変わった入試をしている、っていうところですね。SSで受けたんですね。単純に物理と数学は得意だったけれども、もう少し社会を学べる分野の方がよいかなと思いました。きちんと身になる勉強をしようと思って入学しました。
渡辺
授業はどんなふうに選んで受講なさっていたのですか?
武藤
興味があるものを何でもとっていました。国際関係をとったら、土台としての世界史の必要性を感じて世界史をとる、とか。
渡辺
講義の中で面白いと思ったり、記憶に残っているものはありますか?
武藤
外国人の教授が英語で教える日本史の授業で、チームわけをして能の発表会をしたことがありました。外国人の日本史に対するアプローチとか理解の仕方ってやっぱり全然違ってくるな、というのが面白かったです。
渡辺
武藤さんにとって、ICU での時間はどんな感じでしたか?
武藤
ICUに入ったので、国際的な環境に触れられる機会を活かそうと、シープロに参加しました。ICUにいかなかったら、英語はきっと嫌いのままだったと思います。
渡辺
お仕事の中で、今も英語は?
武藤
日常で使っています。今までの会社だと、みんなが第二外国語として話している人が多くて、あまり苦労はしなかったんですね。ただ、この会社にいるとマネージしている人の国籍はばらばらです。国籍は違ってもほとんど全員が本当に流暢に英語を話すので、第二外国語として話していてよかった頃とのギャップが今課題として感じているところです。
斎藤
今後はどうされようとおもっていらっしゃるんですか?
武藤
最近すごく感じているのが、自分の強い分野は、0 から 1 というよりも、素晴らしい 1 があった時に、それを 100 , 1000へ持っていく過程が一番得意だなと感じています。一番大変なフェーズなんですが...1000 といわず、さらに大きくする部分を学びたいというのがあります。
渡辺
男女ともに、昨今はワークライフバランスという言葉を聞くようになって久しいですが、武藤さんにとって仕事しながら、恋愛して、結婚して、出産するということは、大変でしたか?
武藤
私は、大変なことは全くなかったです。
渡辺
なるほど(笑)。最後になりますが、ICUの学生の皆さんやICUに興味を持ってくださっている若い世代に向けて、メッセージをお願いできますか?
武藤
学生でいられる時代は、学生であることを 100 % 楽しんで欲しいです!嫌でも大学を終わったら仕事をしなくちゃいけなくなるので、学生生活にむりやり仕事の経験をつめこむ必要はないですよ!


プロフィール

武藤 友木子(ムトウ ユキコ)
1998年ICU卒業。在学中は、海外英語研修(SEA)プログラムなどにも参加。 卒業後は、アクセンチュア株式会社(元アンダーセンコンサルティング)に入社。2000年に25歳で、企業間取引の仮想空間を提供するインターネット企業を設立。9ヶ月後に楽天株式会社へ売却し、自身も楽天株式会社へ転籍、26歳で事業部長へ昇進。その後、子会社副社長などを歴任し、7年後の2007年よりアメリカのオンライン旅行情報メディア、トラベルズー・ジャパン株式会社 代表取締役社長に就任。その後OpenTable株式会社 代表取締役社長を経て、2017年1月より現職グーグル合同会社にて新規顧客開発の日本代表を担う。