2015年11月14日、国際基督教大学・東京大学名誉教授で、日本アスペン研究所副理事長の村上陽一郎先生による講演会「大学とリベラルアーツ」が、東京・内幸町の日本プレスセンタービルで開催されました。この講演会はICU同窓会が主催する「リベラルアーツ講座」の第1回として開かれたもので、128人が参加して熱心に耳を傾けました。
村上先生は1936年、東京生まれで、専攻は科学史、科学哲学、科学技術社会論。
講演で先生は、12世紀におけるボローニャ、パリなどでの大学の誕生から始まり、脱宗教化を特徴とする18世紀の啓蒙主義、さらには、19世紀のヨーロッパの近代的大学の誕生に言及。そのうえで、1930年代から始まったリベラルアーツ教育の意味や現状、問題などをアメリカと日本を例に、知の世界の文脈の中で位置付けて解説されました。
日本では「教養教育」という言葉に置きかえられてきたリベラルアーツ教育。先生によると、戦後、大部分の国立大学の「教養部」では、予算や組織的な方法論がなく、1991年の改組(大学設置基準の改正)によってほぼ消滅したとのことです。
一方、教養を中心にしたリベラルアーツ大学において学生は、広く、さまざまな可能性に触れることができるものの、何を専門に学んだのかという意識が希薄なため、社会的に認知されがたい現状にあることを指摘されました。
リベラルアーツ教育の成果として、村上先生は「何でも適応できる潜在能力の豊かさ」を強調。今後、大学院でもリベラルアーツ教育を行い、科学・技術リテラシーや社会リテラシー、それに、コミュニケーション能力を持つことの重要性を訴えました。
その上で、現代の知識人の資質として、多面的にものを考え、自分の立場を相対化でき、カウンターバランスがとれ、「規矩」とも言うべき自分の評価基準を持つことを挙げ、「大学という場所は、そういう人間をつくる場所でありたい」と語りかけ、講演を結びました。
(鷲見徹也、13期)