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6/8 川島重成先生と行く「オンライン“ギリシア”旅行」 第8回 シチリア・南イタリア編 ご案内

戦役に赴く以外アテナイを離れることの少なかったソクラテスは牢獄での友人たち
との対話で次のように言っています。「大地はなにか非常に大きなものであり、パシス
河からヘラクレスの柱*までの間に住むわれわれは、大地のなにか小さな部分に住んで
いるのである。われわれは池のほとりの蟻や蛙のように、海 [地中海] の周辺に住んで
いるのだが…」(『パイドン』109B 岩田靖夫訳 岩波文庫版)。ソクラテスの頭の中ではヘラ
ス(ギリシア)は、アテネやスパルタのみならず、地中海の沿岸の都市(と地中海に浮か
ぶ島々の都市)も含めた拡がりをもつ世界としてイメージされていたようです。事実、
この「池」の上を縦横無尽に航海する交易商人がいなかったなら、アテナイには黒海周
辺から穀物が、マケドニア地方から木材が届かず、日々の食事にも事欠き、デロス同盟
の要である軍船も建造できなかったことでしょう。
また哲学者(とソフィスト)を何人か年代を無視して挙げれば、タレスはミレトスの、
ヘラクレイトスはエフェソスの、ディオゲネスはシノペの出身であり、エンペドクレス
とゴルギアスはシチリア島のアクラガスとレオンティノイの、パルメニデスとゼノンは
南イタリアのエレアの出身で、誰もが知るところではソクラテスとプラトンだけがアテ
ナイ出自の哲学者ということになります。前回旅したアナトリアと今回旅するシチリア
と南イタリア(「マグナ・グラエキア」=大ヘラス)**は、ギリシア本土(小ヘラス)より
文化的にも先進地帯だったと言っても過言ではないのです。
西方ギリシア文字がイタリア半島中部に住んでいたエトルリア人に受け入れられエ
トルリア文字になり、さらにラテン文字になったとする説があります。文字だけでなく、
マグナ・グラキアのギリシア人(一部の都市ではラテン化が進み既に紀元前4世紀にはラテン
語が話されていたようです)とエトルリア人が、そしてカルタゴのフェニキア人がローマ帝
国の支配下に入り、やがて広範な版図をもつキリスト教国家が成立しました。今回のオ
ンライン・ツアーでは、シチリア島と南イタリア(ローマを含む)の遺跡等を重層的に堪
能していただきながら、あらためて<ギリシア的なるもの>とその継承と展開について
再考していただける機会なるのではないでしょうか。

今回は、かつて川島先生が撮りためた写真に、この3月16日から29日までの現地踏査、
そしてそれ以前の旅に参加された方々の写真をも加え、先生を中心に目下鋭意編集中で
す。皆様の参加を心よりお待ちしております。

荒井直(CPS事務局)

* パシス河は黒海東岸に注ぐ河でヨーロッパとアジアの境をなし、ヘラクレスの柱は現在のジブラ
ルタル海峡で、世界の西の涯をなす、と考えられていた。(岩波文庫版の注)
** 「マグナ・グラエキア」がどの範囲を指すかは、地誌作者により異なるようです。

 

日 時 2024年6月8日(土) 14時「出発」
*従来のように日曜日ではなく、土曜日の開催になります。ご注意ください。

司 会 佐野 好則
案 内 役 川島 重成

主たる訪問地 パレルモ、セジェスタ、シラクーサ、メッシーナ、
パエストゥム、ナポリ、クーマ、ローマ

※ まだ登録がお済みでない方は、6月6日(*)20:00までに、下記のWebアドレスからご登
録下さい。6月7日までに、アクセス情報をお知らせ致します。
https://forms.gle/tzaDfukPvtQHqawQ7

文:佐野好則(ID86 30期)