開催日時 2021年9月13日(月) 19:00-21:00
形式 ZOOMによるオンライン 参加費無料
2020年度のDAYトークはDAY(Distinguished Alumni of the Year)受賞者5名の内、3名の方が参加してZOOM形式により実施された。当日の参加登録者は、積極的な呼び掛けが功を奏し、96名(実参加64名)に達した。司会・進行は7名のDAY選考委員の中から竹川隆司氏(ID00)が担当した。なお、終了後のアンケート回答者は26名であった。
選考委員長の木越純氏(ID83)の挨拶では、今回参加できなかった2名の受賞者、パラリンピックで注目を集めたブラインドサッカーの普及に貢献されておられる松崎英吾氏(ID03)と、世界の医療変革にチャレンジするプラットフォームを構築されたベンチャー企業エムスリーの代表であられる谷村格氏(ID87)についても紹介があった。
パネリストひとりずつのスピーチの後、事前に提出された質問への回答やQ&A形式でさらに深い対話が持たれた。
鈴木克明氏 (ID81)熊本大学教授
ICUに入学して初めてAudio-Visualを生かした教育があることを知る。ロータリー財団奨学金を得てフロリダ州立大学でPh.D.を取得、教育工学専攻教授、帰国後東北学院大学教養学部教授、岩手県立大学ソフトウェア情報学部教授、熊本大学大学院教授システムセンター長兼教授、現在に至る。Instructional Design、オンライン授業の創始者、 “Go with the flow whenever it comes.”という姿勢で”新しい教育を創る人生”を過ごして来た。International Board for the Standard of Training, e-learning のフェロー としてアジア開発銀行、JICA等多くの国際機関とも関わりを持った。
熊本大学ではInstructional Design を中心として以下の4つの”I”–Instructional Design, Information Technology, Instructional Management, Intellectual Property–を教えている。また、教え方としては、1.対面授業 2.無理しない 3.同じ価値を追求 4.順序を変える 5.学生は学び続けること 6.非同期で学習を考える 7.平時にも使えるオンラインでICT教育利用の本格化により、Improved Student Engagementを目指す。大学が暇なところではいけない。Improveが大切。学生の意識は高く、ICU並みにしたい。何を目指し、何を残し、何を始めるのかを考えさせたい。詰め込みではなく、学ぶ責任を持つように自主的自律的学習者を育てたい。時を共有しながらリアルタイムと非同期をうまくブレンド出来たらよい。これからは同窓生や後輩との出会いを楽しみにしている。 “No Youth, No Japan.”
児玉治美氏 (ID92)アジア開発銀行 駐日代表
鹿児県出身、子供の頃の海外生活を経てICUへ。大学では国際政治に関心があり、模擬国連に打ち込み、アパルトヘイトの問題にも関わる。国際問題に関心を持ち、千葉県知事も務めた国会議員の秘書として、欧州旅行に参加。1994には国連の会議に参加した。後にニューヨークでNGOジョイセフ(JOICFP)にフルタイムで転職、バハマを担当。エイズ対策や教育に取り組み、貧困援助やアジアの現場にも赴いた。そこでの働きが認められて国連人口基金(UNFPA)から誘われる。2001年から2008年までそこで人口問題等に関わった。その後結婚し双子を育てるために、仕事との両立が可能なアジア開発銀行(ADB)の本部のあるフィリピンのマニラに転任した。18年ぶりに日本に帰り、ADB初の駐日代表となった。仕事では日本政府との連携、アジアへの広報などがあるが、日本が男性優位社会であることを思い知らされたが、「女性初」を利用してADBの活動をPR、DiversityとInclusionについて日経に寄稿した。ADBでは49ヵ国の域内メンバーに対して開発の援助、融資、 Gender平等、気候変動、保健医療など7つの優先課題に取り組んでいる。アジア各国のコロナ対策にも援助を行い、ワクチン接種も助けている。
外から見た日本について少し述べたい。Genderの平等が世界では120位、国際報道における報道の自由度では67位、外国人の住みやすさでは32位、企業の国際競争力ではトヨタの41位が最高、起業のしやすさでは106位、労働生産性はG7中最下位、教育への公共支出はOECD38ヵ国中37位となっている。日本人は元来自己主張が苦手で、これは学生、企業人、外交官も同じである。
ではどうするか。先ず現状に危機感を持つこと、過去の成功体験に甘んじた小さな幸福感から脱すること。正しい国際報道に敏感であれ。公共への依存から民間の活性化を図れ。シンクタンクや市民活動の役割を生かす。多様性を受け入れる。Network(人脈頼り)からSkillを向上させ生かす方へ。若者の登用。教育改革でGlobalな人材を育てる。ICUのLiberal Artsのように、自分で考える力を養うことのできる大学にする。その意味でこれからのICUに大きな期待を寄せたい。
酒井里奈氏 (ID95)ファーメンステーション代表取締役
卒業後富士銀行、ドイツ銀行を経て東京農大応用生物科学部醸造科に入学、発酵・醸造を学ぶ。「未利用資源の有効活用技術の開発」に4年間取り組み、12年の試行錯誤を経てR&D Oriented Companyを立ち上げ、”Creating a circular economic society through its original fermentation.” というコンセプトの下、原料製造からProduct製造へと進めた。発酵についてのノウハウを築いた。そして地域循環産業(Environmentally Friendly Manufacturing)によるSocial Impactを生む為に、事業性と社会性を両立させるものとして、休耕田を利用して米、りんご、を作り、ANAから輸入バナナの不良品を譲り受けて飼料・肥料として利用し、バイオエタノールや粕を原料として化粧品を開発した。
ICU時代は周りの友人が眩しく見え、あまり勉強しなかったが、国際交流には関心があり、就職後はJapan Foundationに出向し、社会貢献に憧れ、Project Financingで目覚めてビジネスと社会貢献の両立を目指すようになった。その結果が東京農大への入学であり、岩手県奥州市の休耕田活用プロジェクトへの参加である。米から抽出のエタノール製造は当初利益を生まなかったが、発酵を生かした様々な応用を模索する内に前述のような製品開発に至り、良い出逢いもあって起業するこが出来た。今はFlatに生きることを心掛け、“Fermenting a Renewable Society”を目指し、1.多様性を尊重–Open & Inclusion, 2. 常に学び、考え、動き続ける、 Think, Learn, Never stopの気持ちでいる。
Q&A
Q: ICU生の時、どのような将来を描いていましたか?
A:(児玉)何となく形成されて行った。 (鈴木)当時からGo with the flow、 (酒井)行き当たりばったりで転職も多かった。
Q:思い出の場所、授業、友人等について
A:(鈴木)言語学の先生間の争いが印象にある。学内ではShyと言われた。アメリカの匂いがした。ICUはガラパゴスの様だった。 (児玉)授業の質が高かった。実技は奥平先生の指導を受け、表現の自由の大切さ、国際法の横田先生は気楽に接して下さった。
Q:最後のメッセージは?
A:(児玉)この機会に感謝したい。ICUへの親近感が増した。このネットワークを生かしたい。 (酒井)感謝です。DAYはもっと実績を挙げてから、と辞退したが、今後への決意表明としてお受けすることにした。 (鈴木)リアルなら可能だった名刺交換とワインが頂けなくて残念。
(以上)
文責: 渡邊一美(3期)