■ プロフィール
1973年東京生まれ。私立武蔵高校卒。1996年にICUの人文科学科を卒業。卒業後に学士編入した東大法学部在学中に、合格率2%の難関を突破し司法試験合格。弁護士として活動する傍ら、一橋大学大学院博士課程を修了し、博士(法学)の学位を取得。現在は、東京リベルテ法律事務所で実務家として活躍しながら、白鷗大学法科大学院の准教授やICUの非常勤講師などとして教育、研究活動にも従事。
ICU同窓会のインタビュー「今を輝く同窓生たち」のインタビューも合わせてご覧ください。
聞き手:三上さん(4年生)、諸岡さん(2年生)
メジャー選びの基準は「人」でした
- 諸岡
- まず、今現在、弁護士としてどのようなお仕事をされているのかお聞きしたいのですが‥‥
- 角田
- お話しする前に誤解のないようにしておきますと,私は典型的な弁護士像にはあてはまりません。
まず、大学の教員をしているという点が違います。割合でいえば、6割が教員、2割が研究、2割が実務、という感じでしょうか。
- 三上
- 実務では、どういった分野のお仕事をされているのですか?
- 角田
- 何でも屋ですね(笑)
- 三上
- というと?
- 角田
- 個人や中小企業の方から依頼されたことは全部やる、ということです。
通常ICUを卒業して弁護士になる人は、企業の国際渉外業務などに携わることが多いと思うのですが、そういう仕事ではないですね。ほかには、ライフワークとして子どもの権利に関することにずっと携わってきました。ただ、それは、自分なりに意識してやっているというだけで、食べて行くための稼ぎを生むものではありません。ICUの人は、好きなことをやって稼ぐこともできると誤解している人が多いですからね(笑)。
- 一同
- (笑)
- 諸岡
- 弁護士にはいつ頃からなろうと思っていたのですか?
- 角田
- 小学生くらいからです。
- 諸岡
- 小学生(笑)!何がきっかけだったのですか?
- 角田
- まぁ単純に、法廷弁護の活動がかっこよさそうだなという。そういうレベルでした。
- 三上
- すると、小学生の頃から一貫して弁護士を目指していたのですか?
- 角田
- いえ、一時期、国際機関の職員になりたいとも思っていました。
- 諸岡
- なぜ国際機関、だったのですか?
- 角田
- それはまあ、ICU生らしい理由です。日本は豊かだから、何か人権の問題というのは日本の外にある、みたいな話です。今思えば、大した根拠もなくそう思っていたんですね。
まぁ、そういう思いがあったので、IS(国際関係学科)に入ったのですが、3年時にヒューマニ(人文科学科)に転科しました。
- 三上
- ISとヒューマニって‥‥全く違いますよね?
- 角田
- そうですか?
全く違うと思う、その感覚に問題があるかもしれませんね。
私がICUにいた頃は、そんなに違いを感じなかったですよ。どちらにしろ、1年生のときから専門科目なんて取らないじゃないですか。
- 諸岡
- 確かに‥‥。では、ヒューマニに転科した理由は何だったのですか?
- 角田
- 端的に言ってしまえば、人、ですよね。
- 諸岡
- 人‥‥?
- 角田
- つまり、その分野だから選ぶのではなくて。私は教員との関係で選びました。
- 諸岡
- 将来のために人脈を広げる、という感覚ですか?
- 角田
- またそれも全然違う発想ですね。というか、人文科学の人脈なんて、仕事をする上で役に立つという発想からもっとも縁遠い分野ではないでしょうか(笑)。
そうではなくて、会話などをしていて、刺激になるかどうか、ですね。
- 諸岡
- 刺激、というと?
- 角田
- 自分が鍛えられそうだとか、頭が良くなりそうだとか、そういった感覚です。つまり、考えさせてくれる人物の存在、ということですね。
- 三上
- それが、ISにはなくて、ヒューマニにあると感じたわけですね。
- 角田
- 私はそう思いました。
- 三上
- ちなみに、そんな魅力的な先生とは、どなただったのですか?
- 角田
- 出会いとしては古屋先生でした。そして、並木先生ですね。
並木先生がいらっしゃらなかったら、ヒューマニに転科してはいなかったと思います。
- 三上
- 並木先生のもとでは、どのような勉強をされていたのですか?
- 角田
- 並木先生は、旧約聖書学が専門です。伝統的な旧約聖書学では、ヘブライ語の文法などを学び、解釈をするわけですが、並木先生は、ICUの学部教育では、そういったことをそのままやることは相応しくない、という考えを持っておられます。なぜなら、学生を旧約聖書学の専門家に育てることを主としているわけではないからです。
- 三上
- すると、角田先生ご自身、聖書やキリスト教の精神に興味があったわけではなかったと?
- 角田
- そうですね。キリスト教に抵抗感はなかったですけれど、だからといって、信仰として、旧約聖書学の真髄を知りたいんです!みたいなことがあったわけではありません(笑)。
ただ、古代イスラエルにおいて、どのような歴史的危機があったのか、その結果、なぜ旧約聖書に結実したような思想が育まれたのか、ということには興味がありました。そしてそれを、今の時代に当てはめて考えたりするわけです。
現代にもその縮図のような構造があるのではないか、とか。
- 三上
- なるほど、法律とは別に、そういった勉強もしていたわけですね。
- 角田
- 別というか、結局、旧約聖書は法そのものですからね。
- 一同
- はあ~。なるほど~。
- 三上
- ちなみに、そういった学びの中で、並木先生のどのあたりが刺激になると感じたのですか?
- 角田
- とにかく引き出しが広いんです。
極めて色々な分析ツールを持っていて、「それは関係ないね」とは絶対に言われないんですね。
- 諸岡
- 学生の意見を否定しないという感じですか?
- 角田
- もちろん、批判的になることはあります。ただ、よく、自分に合った答えが出てこないと、流して次の人に当ててしまうような先生もいらっしゃるじゃないですか。でも、並木先生は、それは絶対にせず、とことん付き合って下さいます。「何で君はそう考えたんだ」と問いかけ続ける感じで(笑)。
- 三上
- 今、先学期とった角田先生の授業を思い出して、並木先生の影響が大きいんだなと思いました。
角田先生も学生ととことん向き合う授業をされますよね。
- 角田
- 影響はありますよね。
私も絶対に頭から否定はしません。学生の考えを引き出していこうとしています。正解を求めないんです。
メジャーとキャリアの関係は‥
- 角田
- 話を、メジャーとキャリアに戻しますね。あえて明快に言ってしまえば、メジャーとキャリアとの間に関係はないと思います。
- 一同
- ええっ、どういうことですか?
- 角田
- 逆に言うと、私が普通の大学の法学部出身の弁護士とは違う視点で研究ができているのは、法学部に入らなかったからだと思います。
- 三上
- 具体的には?
- 角田
- 具体的に言うのが、これが難しいんですけど(笑)。学会などで質問する観点が、他の人と違うらしいんです。例えば、「この観点からも検討が必要なのではないでしょうか」といったことが、他の法学部出身の人からは出てこないんです。
つまり、批判的思考の1つなのですが。でも、それが何で法学部卒だと出てこないのか、私には実感できてはいません。
- 三上
- わからないけれども、角田先生は他大の法学部を選ばなかったわけですよね?
- 角田
- でも、その当時、法学を究めるためにはリベラルアーツに入っておいたほうがいいとは思っていなかったですよ。これは、結果論です。
- 三上
- ICUの法学専攻でも、専門性が身に付くとは思っていなかったのですか?
- 角田
- 思っていなかったですね。
よくICUで弁護士になりたい人に、キャリアプランはどうだったかとか聞かれるんですけれど、あまりそういうことを考えたことがなかったんですね。当時、司法試験に受かるには大学の勉強だけでは無理だと言われていました。ですから割り切りがあって、大学に職業教育を求めなかったわけです。それで、法律は1年生のときから予備校で勉強していました。
- 諸岡
- 大学は、知識を身につけるためにあるのではないんですね。
- 角田
- それは一面ではそうです。でも、「この人は言われたことをこれだけできるのだ」という評価を受けられるような事務処理能力も必要なんです。例えば、高校で英語ができると言われる人が、本当にできるとは限りませんよね。
でも、その人は言われたことをきちんとこなして一定の成果を上げることができるという側面はもっている。大学にもそういう学科教育的側面がまだあって、それもそれで重要です。
やはり成績が悪い人は、事務処理能力が低いということになる。
- 諸岡
- な、なるほど〜。
- 角田
- 試験前にそれなりのことをやって、取捨選択をしてそれなりの対応ができないと、それは企業も嫌ですよ。例えば、プロジェクトで大変なことが起って、あと3日で何とかしなければならない!というときに、取捨選択をして対応する力がないとどんなに素晴らしい発想力があってもだめなわけですよ。
弁護士もそうです。3日以内にこの書面を書かなければいけないというときに、成果物にできない人ではだめなんです。
- 諸岡
- なるほど〜。
- 三上
- 少し話が戻るのですが、先程ICUの法学専攻では専門性は身に付かないとおっしゃっていました。角田先生はICUで法学を学ぶことの意義は何であるとお考えですか?
- 角田
- 法学を学ぼうとすることはいいですけれど、法学部やロースクールと同じようにやることは意味がないだろうと、私は思っています。だから絶対に、ICUの法学専攻で、ロースクールの前倒し的教育をすることはあってはならないと思っています。
知識を身につけるのはいいけれど、そのままありがたくお経のように受け入れるようなやり方はICUには相応しくないですよね。
- 諸岡
- 既存の結果を受け取るのではなく、どう作られたかというプロセスが大事であると。
- 角田
- そうです。法律も、条文をただ暗記するのではなく、なぜそのような法律が出来たかを、その時代背景と照らし合わせながら考えるのが、ICUらしい法学だと思います。
それで、そういった教育がしやすいのは人文科学系(ヒューマニ)であるのは確かです。
どうしてかというと、例えば、プラトンが書いたことを全部暗記して筆記できるようになれ、なんてことありえないじゃないですか(笑)。
- 一同
- ないですね(笑)。
- 角田
- ギリシャ古典を読むときは、テキストと対話して時代的な意味を考えることが重要なわけですよね。
でも、例えば政治学や経営学で間違った教育をすると、この教科書のここの部分を暗記して、というふうになりかねないわけです。つまり、対話が意識されなくなる。
- 諸岡
- なるほど。「対話」がキーワードですね。
- 角田
- そうですね。
- 諸岡
- 以前、「リベラルアーツ教育とは、他者との対話を通して自己と向き合えるようになることである」と森本あんり先生がおっしゃっていました。今、角田先生がおっしゃった古典との対話は、そういった意味でリベラルアーツと繋がっているな、と思いました。
- 角田
- そうです。リベラルアーツ教育とは、まさに古典を読むことなんですよね。
まぁ、色々な対話の仕方がありますけれど、その対話のひとつとして、歴史を越えた対話しなさい、というところがあるんです。
つまり、古典的なテキストに触れる、ということです。時代を超越した、何か普遍的な良いものがあるのではないか、という問いを発することが、リベラルアーツにはあるんでしょうね。
- 諸岡
- そうすると、ICUでリベラルアーツを存分に味わえるのは人文科学系のメジャーであるような気がしてきました(笑)。
- 角田
- それは、私はそう思っていますよ(笑)。
メジャー選択よりも大切なこと
- 三上
- では、もしメジャー選択に悩む学生が角田先生のところへ来たら、どんなアドバイスをしますか?
- 角田
- 「何でもいいんじゃないの?」と(笑)。
- 一同
- (笑)
- 角田
- まぁ、「この先生と会話していると知的に刺激されるな、という人の授業を中心に取ってみたらどう?」という感じでしょうかね。
- 三上
- 人で選ぶ、ですね!
- 角田
- そうですね。
まぁ、メジャー選択はご縁でいいんじゃないかと。偶発的なものでいいんですよ。メジャーの選び方、みたいなマニュアルはないと思いますけどね。
- 三上
- そういうものですよね。
でも、やっぱりキャリアのためにメジャーを選ぶという学生が多いんですよね。それこそ、国際機関に勤めたいから国際関係学や開発学を選ぶ、といったような。
- 角田
- ICUの4年間で学んだことを使って、どこかに行って何かやろうといっても、そんなことできるわけないし、もしできるのであれば、世の中の問題は全部解決しちゃいますよ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 三上
- ICUのメジャー選択に、専門性を持つ事や知識を極めることを求めるべきではないということですよね。
- 角田
- 逆に、なんで知識を極めたいと思うの?
- 諸岡
- やっぱり、自分の専門分野の知識がないと自身が持てないというか、仕事をしていく上で成り立たないんじゃないかという不安があるからだと思います。
- 角田
- うーん。でも、採用する側の企業は、学部の4年間で得られる程度の知識に全く期待してないですよ。
例えば、うちの事務所の事務職採用は、法学部出身かどうかは全く関係ないですし。
- 諸岡
- えっ、じゃあ、企業は専門知識ではなくて、人間性だけを見てるってことですか?
- 角田
- 企業側は、エントリーシートに書いてあるのが何メジャーかとかいうことよりも、書いたり読んだりという「知的基礎体力」がある人材を求めていると思います。
- 三上
- なるほど‥‥。でも、その「知的基礎体力」が身に付いているという実感が得られない、という不安が学生にはあると思うんです。
角田先生は、そのような実感を得られたことはありましたか?
- 角田
- それはもちろんありました。ICUでは記述式の試験が多いですよね。それに対して先生のコメントがありましたし。
書くことも読むことも、ELPでやったことを実践するということで成り立っていたと思います。
- 諸岡
- その知的基礎体力を身につけるためには、どうしたらいいんでしょうか?
- 角田
- 一番わかりやすいのは、書くことでしょうね。
- 諸岡
- え、発表することは重要じゃないんですか?/dd>
- 角田
- 発表することは、基本的には、書くこと、つまり構成を考えて言語化することです。
発表するときに、話すことが自然と頭から湧いてくることってないですよね。
- 諸岡
- あー、なるほど!
- 角田
- 構成を考えないで話すということは、ありえないですよね。タイトルやトピックセンテンスのないものは居酒屋の会話と同じですよ。書く技術を先に磨けばプレゼンテーションはうまくできると思います。
- 三上
- 書く機会を見逃さずに、ひとつひとつ丁寧にやっていくことが大事ですね。
- 角田
- そうそう。もしも自信をもって出したレポートに、先生からのコメントが無かったら「成績Cって返ってきましたけれど、どうしてなんでしょうか?」って、食らいついていけばいいんです。
もし先生に「私はそういう個別対応はしていない」と言われたら、学部長に言いに行けばいいんですよ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 三上
- ちなみに、角田先生が学生時代に書くことや発表することで、頑張ったことってありますか?
- 角田
- やっぱりELPをすごく頑張りましたよ。あと、答案書いたりレポート書いたりするときも、何となく書く、ということはなるべくしないようにしていました。
- 一同
- 素晴らしい〜!
- 角田
- もともと授業でもどんどん発言するタイプだったので、授業でしゃべっている割にはレポートを適当にやって、後で先生から「角田君、ちょっと手を抜いたね」とか言われたくなかったので(笑)。
偉そうなことを言っても、やっていることは違うじゃないか、ってなりますし。
やっぱり、自分を追い込むことは大事ですよね。自分を追い込み、負けず嫌いになる!
授業では絶対に発言すると決めていましたね。
- 一同
- すごいですね!
- 角田
- とにかく、言えることは、ELPで学んだ事を大切にして、日々の授業でもしっかりと実践する、ということですね。
- 三上
- ですよね(笑)。
- 角田
- ELPで学んだプロセスをしっかりやる。
単に成果物を出すのではなくて、なぜだめだったのか、どう改善しなければならないのか、ということを意識しながらやることです。
- 諸岡
- こうして聞いていると、メジャー選択で悩んでいることがバカらしく思えてきました(笑)。
- 角田
- 私はそう思いますよ(笑)。
- 一同
- (笑)
- 三上
- とはいえ、仮に3年次にメジャーを選ぶことに意味があるとすれば、それは何であると思いますか?
- 角田
- まぁ、しいて言えば‥‥自分の動機付けくらいですかね、選ぶということは。何かに書いて、「がんばるぞ」みたいな。
- 諸岡
- なるほど(笑)
- 角田
- 悩むのであれば、今やっていることを一生懸命やったほうがいいです。だって、ただのタイトルの悩みでしかないじゃないですか。何をやるかの悩みだったら、どんなタイトルであれ関係ないはずなんです。2、3授業を取ってみて、絶対に合わないというものはあると思いますけれど。だから、興味で選べばいいと思います。
興味で選んだものは、後々皆さんの不利益にはならない、ということはわかっていたほうがいいですね。
「無駄なもの」は何もない
- 三上
- 最後に、少年事件のお仕事についてもう少しお伺いしてもいいですか。
先生は、「少年がかわいそうだから愛を」という考え方とは違うスタンスをとっているそうですが。
- 角田
- 少年事件では、大人が何かを注いであげることによって少年が回復していくみたいな間違った発想がよくあるんですよ。
でも、少年は少年なりに、様々な挫折を経験しながら一つの人格として一生懸命に生きているんです。それを単なる弁護士が人生の先輩のように偉そうに言うのは、どうかと。
- 一同
- はあ‥‥。
- 角田
- どうにもならない状況でやってきた人はたくさんいるんですよね。特に少年なんかは、人間関係についてすごく過敏な子が多くて。
- 三上
- う〜ん、そうなんですね。
- 角田
- だから、少年と向き合うときが一番緊張します。全部見抜かれているかもしれないって。
あくまで法律の資格を持っているにすぎないんです。
- 三上
- そういった角田先生の考え方は、弁護士になってから培われてきたものなんですか?
- 角田
- そうですね。
でも、最初の頃は、「導く先生」っていう部分もあるんじゃないかって多少思っていましたね。
少年事件をやっている弁護士っていうのは、少年には可塑性があって変えてあげられるから、他の弁護士の仕事とは違うっていう人が多いんですよ。
- 三上
- なるほど。でも実際はそうではないと?
- 角田
- 私は、少年事件は最も弁護士らしい仕事だと思っています。信頼関係の築き方がすごく難しいですよ。少年だって、今までいろいろな人間関係を育んできている訳で、そう簡単に一弁護士がその子を変えられるなんて傲慢もいいところです。
少年の他には、ヤクザの親分も、表面的な対応はしてくれても、根底では絶対に心を許していない人が多いから、すごく緊張しますよ。
- 三上
- でもあえてそこをこだわっているんですよね?
- 角田
- 辛いですけどね。
でも、近頃、弁護士生活13年目にして、自分がやってきたことを認められることが増えてきたんですよ。
それは私の大きな変化ですね。
人間関係の機微がぐちゃぐちゃになった極めて難しい問題を対処して、最終的にやって良かったなあと思うことが増えていて。
- 三上
- そういうのが原動力になってきているんですか?
- 角田
- うーん、もちろん嫌なこともあるんですけれどね。負のエネルギーを全部背負い込むっていうのは疲れますから。
それでも、色々やっていく中で、今まで思ってもなかった糸がほぐれていく。
どういう訳か、結婚した時期も関係しているみたいなんですよね。
- 諸岡
- 結婚も関係あるんですね!
でも角田先生ほどの方でも、13年やって初めて成長を感じられるなんて驚きです。
- 角田
- もちろん、法的な面で説得力のある良い書面が書けるようになった、という成長は10年目より前にも感じた事はあるのですが、人間としての成長っていうのはここ最近のことですね。
- 一同
- うーん、すごい。
- 三上
- 今までの積み重ねが意味をなすには、10年かかるということですね。だからメジャーは何でもいいから、とにかく選んでやりなさい、と。
- 角田
- そうですね。
ただし、ちゃんとやる、と。それを選んだことによって、無駄になるんじゃないかとは考えない方がいいですよ。
とことんやってみればいいんですよ。誰かがあなたにとって、これが無駄とか決めてくれる訳じゃないんだから。
- 諸岡
- 相手が提供してくれるのを求めちゃいけないんですね。
- 角田
- ICUはそれに向いていない大学だと思いますよ。
だったらもっとカリキュラムのしっかり決まっていて、自分では選べないところに行った方がいいじゃないですか。
- 諸岡
- じゃあやっぱりICUのリベラルアーツ制度の良いところは、自分自身で選んで、構築していくこと。自立性をもって、問題意識をもって、ということでしょうか?
- 角田
- そうですね、皆さんは与えられるのではなく、問われている存在なんですよ。
だから、まだまだ学生から問いを発すれば、反応してくれる教員は多いと思いますよ、他の大学に比べれば。
- 一同
- 今日はどうもありがとうございました。
<以上で、インタビューはおわりです。>